人の不安定さに寄り添う仕事

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人の不安定さに寄り添う仕事

2010年2月5日


ブログをご覧いただいている方から「kinsanの事業所は本当に良い現場ですね。ちゃんとした介護を毎日提供できているようですね」という言葉を頂いた。確かに、成功事例を記事にすることが多いので、そのような印象を持たれても仕方がない。しかし、実際はほとんど毎日失敗とミスが起きている。今日は日々私たちが繰り返している失敗について書いてみたい。

失敗と一口にいっても何をもって失敗とするか?
それを一番客観的に判断するものさしはケアプランだろう。ケアマネジャーの作成する居宅介護支援計画書、そして各サービス事業者が作成する○○介護計画書(通所、訪問など)である。今はまだ少ないが、自身や家族が作成するマイプランなどもある。

この中で中長期、短期の目標、それに沿った具体的支援内容が掲げられている。これが達成できたかどうかが失敗の判断になり得るだろう。

例えばNさん90代男性で考えてみる。
Nさんの居宅サービス計画書の目標としては次のことが挙げられている。
【長期目標】
・転倒を予防し在宅生活を継続する
・生きている実感を持つ
・安楽に安全に入浴する
・在宅生活の継続
【短期目標】
・安楽な動作を目指す
・ご本人の強みを見出す
・清潔に暮らす
・居場所づくり

これらを受けて通所介護計画書では次の活動内容でそれを満たそうとしている。
・各種ゲーム・・・他者とのゲームやレクレーションを通じて、関係性の構築を目指し、楽しみや役割を支援する
・手作業、力仕事・・・手先の器用さ、力自慢な能力を存分に発揮していただき、ご本人の役割を構築する。その役割を通じて、その場での居場所、周囲からの承認による自尊心の保持を図り、生活意欲を保持する
その他割愛。

先日は、得意な百人一首(今でもほとんど一節読むだけで下の句まで言える)を通じて、仲間とのカルタゲームを企画した。
しかし、Nさんの気分は乗らず、目をつむったまま「私はやらない」と言い、お地蔵さんのように座して黙してしまった。
周りの方も「Nさんの番ですよ」と声をかけるが、「今日は結構」との一点張り。結局、周囲の流れはトランプなどに移り、Nさんの苦手とするゲームになった。終始Nさんへの関わりは希薄となり、その日は終わった。

上記目標でいえば、Nさんの役割も本人らしさも発揮できず、周囲からも「ノリが悪い、ご機嫌ナナメ」という印象を与えてしまった一日だった。
ノリノリの時は大好きな活動だが、この日は全く逆の結果になってしまった。

振り返ると、要因はたくさんある。
・その日は足の運びが悪く、歩行器で移動するNさんはかなりの疲労があっただろう。それでも、見極めながらできうる限りの歩行の機会を提供した。それが強い眠気を誘った可能性がある。
・Nさんは口腔ケアの後に、ゲームの輪に入った。しかし、そこではすでにゲームの準備が始まっておりその場にいた3人の方々リードの流れができていた。
・一緒にゲームに参加した方のご性格が競争心が強く、ゲーム事に本気になるタイプなので、Nさんの強みを承認してくれるタイプではなかった。メンバーコーディネートの選定ミスだった。
・隣のグループは、同じくカードゲームを行っていたが、Nさんをそちらへ移動して頂いたほうが、メンバー的には上手く運んだ可能性がある。
その他色々な要因が考えられる。もちろん、失敗の中にも良い点はあったのだが、この日は失敗要素が強かった。


私たちは、この失敗から次回の活動導入や活動展開の方法を探っていく。失敗の繰り返しの先に、うまくいくことがある。しかし、失敗から学んだことが、次は間逆に働くことも起こり得る。なんとも不確定要素を多分にはらんでいる現場だ。

医療の外科手術は、精密な検査(アセスメント)を行い、手術の方法、段取りなどをしっかりと立て(支援方針、計画立案)、手術を実行し成功させる。
それに比べると介護は絶え間なく変化する人の不確定要素をその都度読み取りながら、臨機応変に対応していく。まさに瞬間ごとがアセスメントであり、瞬間ごとがモニタリングであり、その瞬間を総合的に判断して具体的な支援を実行したり、その場で変更したりするのだ。外科の手術に比べると不安定で失敗が多い。専門職の仕事としてはとても頼りないかもしれない。

しかし、この利用者一人一人の不安定さ、揺れ動くことに寄り添うのが介護だ。
人はみな不安定さ、曖昧さ、至らなさ、不確定なものを多分に持っており、様々な環境に左右されて更に揺れ動いていく。

この人の揺れ動きにこそ、人の人たる所以があり、そこを認め、そのままでいることを支援することが介護だ。

かといって支援することがそこまで不安定すぎてはいけない。だからこそアセスメント、計画、実行、モニタリングがあるのだ。そしてスタッフ間の共有やカンファレンスがあるのだ。
絶え間なく揺れ動く中に、一つの道を見出し、寄り道をしながらも、その道の方向へ進むことを後方支援する。

今日も当たり前のことを書いている気がする。しかし、当たり前のことこそ一番大事である。外的要因などでこの当たり前のことをないがしろにして現場を回してしまいそうになる自分たちに気づく。今、介護の基本を改めて見直している。


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Category 失敗談

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この記事へのコメント
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 今、私は来期に向けて業務改善のプランを考えています。
 年間の改善項目とスケジュールも考えていますが、
 それよりも大切なことがあるのではないかと思いました。

 その答えは、 1:動機付け
        2:失敗を歓迎する  この2点をまず考えるべきと思いました。
 
1:動悸付け については、なにかアクションを起こす時、なぜそれをしなければならないのか?
はっきりと理解してもらわないと、今までのやり方にもどり、成長が望めないからです。
 人間は、特に女性の特性として、守りの本能から“変化”を受け付けない傾向があると思います。
その本能を上回る“動機付け”がないと新しいアクションも支持されないのではないかと感じています。
そして、その動機付けの核となる考えは

“あなた(ご利用者)が大切だ、という気持ちを痛いほど感じたとき、人の心は動く”です。

いかにしてこの考えが定着するか、来期の私の課題です。

2:失敗を歓迎する について、
失敗の対処法として5つ挙げられます。
@失敗を失敗と認識する。
A失敗を認め、自分の責任を認める(前提として、個人を責めず、罰を与えない)
B謝罪する(完璧より、迅速にフォローする)
C問題を解決する(一度で万全の対策を立てる。個でなくシステムを改良する)
D気持ちを形であらわす。

@をはっきりさせないと、最初は小さな失敗も、積み重なるとやがて大きな失敗となります。
失敗学のハインリッヒの法則が証明しています。
Aですが、どうしても個人を責める傾向が組織には内在しています。まずはスタッフを安心させることが
大事だと考えます。
Bいかに早くフォローするか、遅れると問題はどんどん悪化します。
 訴えに対して、“私が責任を負います”と宣言すれば、それは最善を尽くす覚悟の表れです。その一言を
 聞くと、おおかたの人は怒りが静まり、話をきいてくれます。
C問題解決のため、関係者で話し合い答えを出します。
Dきちんと答えを伝える。それに加えて何らかの心配りをする。

この考え方が定着すれば、失敗の対処にとどまらず“自分で考える”この力がつくでしょう。
そうすれば、最強のチームが出来ます。3年くらいで組織文化が変わってくれたらいい。今の私の夢です。

参考にした著書:ジャック・ミッチェル著 94%の顧客が大満足と言ってくれる私の究極のサービス
Posted by ウエッティ at 2010年02月05日 09:44
ウエッティさんコメントありがとうございます!

私も来年度の方針や業務改革をスタッフと共に創っているところです。
さて、ウエッティさんの挙げられた2点ですが、1は利用者さんの動機付けで、2の失敗を歓迎するのはスタッフの側のことでしょうか?

私も2点はとても大事なことだと考えます。

そして、これは利用者さんが主体的に動くことの動機付けも、それによって失敗し挫折することを歓迎することが支援としてできていることが大事です。
また、スタッフも自ら利用者さんへの介護や、業務や組織への働き掛けをする主体的になる動機付けと、失敗することを包み込む風土が大事ですね。

そう、ウエッティさんがおっしゃる大切な2点はどんな人に対しても必要なことですね。

私も、言葉ではこうして書いているのに、実際に利用者さんやスタッフと向き合う中では失敗の連続です。自分自身の未熟さに恥ずかしさを覚える今日この頃です。

そんな、私を受け入れてくれている職場の上司、先輩、同僚の方々、利用者さん。。。。

人の心が動く時・・・それは自分が相手のためになにかしてあげたいと思った時なのではないかと思います。完璧な介護を提供できる人ばかりが周りにいることではなく、若かったり、未熟だったり、お粗末だったり、そんなスタッフの弱さも必要なのではないでしょうか?

人は人の弱さを前にすると、助けてあげたくなると思います。ただ、みんな助けて!と簡単に頼れないから悩むのでしょうね。

今の自分のようです(笑)

少し論点がズレてしまいました。申し訳ありません。文化の創造!応援しております!
Posted by kinsan at 2010年02月06日 07:40
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