人の死と介護業界

人の死と介護業界のページを説明

新着記事一覧 〜最新の記事はコチラです〜

人の死と介護業界

2010年4月27日


この仕事で何回経験しても辛いのは利用者との別れである。

今日は一人の利用者との死別を通して見えた介護業界の現状をお伝えしたい。


Uさんは50代男性。脳梗塞で片麻痺、失語症の方だ。
私が初めて出会った失語症の方で、コミュニケーションの面では色々な苦労があった。Uさんも意志が伝わらないことに何度も苛立ちを覚えたことだろう。
それでも意志が通じた時のあの安堵感と歓喜は何度味わっても忘れられない。

Uさんは私の父とほぼ同い年。一年前に父が脳梗塞で倒れて手術をした時、不安を抱きながらいた私と一緒に泣いてくださった方だ。
不思議と彼には何でも話せた。涙を流して話す私に失語症のUさんはただただ涙を流して私の肩を叩いてくれた。

父が社会復帰した時は誰よりも喜んでくれた。ことあるごとに「親父さんは元気か?会いに行ってやれよ」と言って(言葉ではなく)くれた。


そんなUさんが突然脳出血で倒れ、一週間もかからずに亡くなった。
確かにこのところの寒暖の差で血圧が高い日が続いていた。
ケアマネと「心配だ」と連絡取り合っていた矢先だっただけに悔やまれてならない。


私が現場の最中に連絡があったが、上司は業務が終わるまで、私にそれを伝えなかった。上司は結果がわかっていたからだ。

上司からUさんの話を伝えられた瞬間、私はしばらく我を忘れた。

「……え?」

「(上司は)何を言ってるんだ?」


そして上司の一言。

「もうデイは来られないって。あれが最後のケアだったんだよ」


胸が引き裂かれた。涙だけが流れて、わずかに遅れて感情の津波が押し寄せた。私は人目もはばからず嗚咽した。

最後にUさんにかけた言葉を思い出した。


「Uさん、最近なんか調子悪くないですか?そろそろ長い付き合いだから気になるんですけど?」

Uさん「(え?別に。大丈夫だよ。何言ってんだおまえ(笑))」と言って手を振った。



後悔・・・



そんなことを思い出しながら泣いている私。気がつくと、目の前にはお茶とティッシュが置いてあった。



もちろん、私のように個人的な思い入れがある人間だけでなく、事業所は一人の方と別れが訪れる度に、職員みんなで分かち合い、涙し、そして彼らから学んだことを共有している。Uさんの死もスタッフだけでなく、利用者とも分かち合い、共に想いを分かち合った。


お茶を飲みながら「この現場で良かった」と思った。



そして、その知らせを聞いた1時間後に私は東京での会合に出席しなければならなかった。その日は担当の係があって、発表をしなければなかった。事前に準備してきたこともUさんのことでほとんど吹っ飛んでしまった。

会合で、他の事業所の方々にお会いして、「今さっき利用者さんが一人亡くなっちゃって・・・ごめんなさい。事前準備はしっかりやってきたのですが、発表に不手際があるかもしれません」とお伝えした。


そして集まった皆さんからいただいた言葉。


「大変ですよね。うちもこのシーズンに3人亡くなっちゃって、大変なんですよ」
「最近よく亡くなりますよね」
「ちょっと痛いですけど、また暖かくなったら持ち直しますよ」


私は面食らった。

会合に集まった方々はみんなとても素敵な方たちで、尊敬している。そんな方々から心から本当に純粋な“同情”を頂いたのだ。


私はかつて民間介護企業で管理者をしていたので、彼らの発する言葉の意味もわかるし、私がかつて同じ言葉を発していたことも覚えている。しかし、それだけにショックだった。

「そうか、これが今の介護業界なんだ」と感じた。


これは決して私たちの事業所が良くて、数字的に利用者を見る事業所が悪いということではない。一人ひとりの利用者の死で動揺しているようでは事業が成り立たないかもしれない。精神的に持たないかもしれない。
もちろん、他の事業所の方々も、自事業所内では利用者との別れを分かち合っていることだろう。


ただ、私の個人的希望としては、自事業所のように、もっと一人ひとりの利用者の死を関わった人々と共に分かち合い、そこから学び、明日へつなげていけるような事業所にしたい。そして、関わったことが無い人々でも、他事業所同士でもそのことを共に分かち合えるような地域、文化を創りたい。

理想かもしれないが、そのような福祉社会を夢見てもよいのではないだろうか。



今この記事を書いて涙がまた出てくる。すると、Uさんのご家族からお電話をいただいた。

「本当にお世話になりました。Uはデイサービスが大好きだったんです。本当に大事にして頂いてありがとうございました」と。

Uさん、最後までやってくれますね。タイミングがぴったりですよ!

少しでも多くの方にこの記事を見ていただけるようにランキングへのご投票よろしくお願いします!あなたの一日ワンクリックの応援、感謝いたします(>o<)
にほんブログ村 介護ブログへ
banner2.gif


介護の専門性新提案の人の死と介護業界のリンクについて

介護の専門性新提案の人の死と介護業界のリンクについて
リンクを自由に設置して頂いて結構です。
宜しければ以下のタグをご使用下さい。
この記事へのコメント
Kinsan、こんにちは。
読ませていただきました。よく伝わりました。
私が思うに他事業所の方々の言葉は、「デイ管理者のKinsan」にかけた言葉だと思いますよ。
会合の席なので、頭が事業所モードになっていたのではないかと思います。
大丈夫。
Posted by YUKARI at 2010年04月27日 20:31
YUKARIさんコメントありがとうございます。

おっしゃる通りかもしれませんね。いきなりそのような期待をしていた私の主観を押し通しすぎたかもしれません。

しかし、せめて私は「そのこと(利用者さんの死)であなたはどんな気持ちですか?」という言葉掛けをできるようになりたいと思いました。

人それぞれ違いますからね。コミュニケーションは奥が深いです。
Posted by kinsan at 2010年04月28日 08:33
こんにちは
はじめまして
ブログランキングからやってきました

同じようにお客様との別れが
あったので共感でした

プロとして福祉人として
人の死で何も感じないようなら
福祉に携われないと思います


いろいろな人がいていろんな考えがあってを理解したうえで

個人的な意見では
励ました方々の言葉かけには
同意できないのが本音です


一緒に悲しみを分かち合う
そんな福祉職を目指してます


Posted by でいすけ at 2010年04月28日 16:35
Kinsan、奥が深いですよね。
なんとなく思ったのは・・・「時間」―多くの時間を共にすること。
共に悲しみを分かち合うまでに至るには、やはり時間(=交流・関わり)が必要です。
Kinsanの純粋な気持ちもわかります。
思い描く福祉を目指す人はつらいですね。深い意味はありません(笑)

Posted by YUKARI at 2010年04月28日 21:58
でいすけさんコメントありがとうございます。

デリケートなテーマだと思います。人の死に何も感じない、感じても表出が下手だったり、表出してはいけない環境の方もいるかもしれませんね。

そんな方々でも福祉に携わっている人はたくさんいますよね。

おっしゃるように『いろいろな人がいていろんな考えがあってを理解したうえで』が必要ですね。

一緒に悲しみを分かち合える文化形成への道のりは遠いですが、頑張りたいですね。
Posted by kinsan at 2010年04月28日 23:18
kinsanへ

個人的には、必ずしも“死”は否定視していません。(誤解を恐れずに言いますと)

ただ、一緒にいられないのは非常にさびしいです。(リアルにあえませんから)

思うのは、死はゴールであり、新たな門出でもあるのではないでしょうか?

私たちは、その人のゴールがよりいいものであるようサポートしているのだと思います。

死を目の前にしていつも思うことは

―本当に力がつくせていたか?

―もっと出来ることがあったのではないか?

人生のゴールを素直に讃えるに値する仕事をしたい。(うまくいえない)

つまり、悔いのない仕事をしたい、という事でしょうか。

きっと答えはないでしょうが。

   Uさんのご冥福をお祈りいたします。
    いい人生であった、と思って旅立たれたと願います。
Posted by ウエッティ at 2010年04月28日 23:23
>「大変ですよね。うちもこのシーズンに3人亡くなっちゃって、大変なんですよ」

何が大変なんでしょう?


まぁ、自分なんかはもっとひどいことを日常茶飯事で耳にしています。介護に携わる者として以前に、人としてどうなのかと思ってしまうような。「今月○人も死んじゃったから売り上げがやばいよ〜」とか。

腹立つし、情けなくなるし悲しくもなるけれど、他人は他人。自分たちはきちんと向き合いましょう。
Posted by gitanist at 2010年04月29日 00:31
ウエッティさんこめんとありがとうございました。

死に関してはおっしゃるとおりで、私も同意見です。

だからこそ、

>―本当に力がつくせていたか?
>―もっと出来ることがあったのではないか?
>人生のゴールを素直に讃えるに値する仕事をしたい。(うまくいえない)
>つまり、悔いのない仕事をしたい、という事でしょうか。

Uさんの若すぎる突然の死に対して私は今、後悔しているのだと思います。

この仕事に死はつきもので覚悟はできているのですが、突然はいつも辛いものです。悔いの無い仕事をしたいと思います。
Posted by kinsan at 2010年04月29日 08:17
gitanistさんコメントありがとうございます。

おっしゃるとおりです。しかし、私自身も同じような発言を違和感なくしていましたので、人を変えるのは環境なのだろうと思います。

せめて自分の出会う人々に関しては同じ想いを共有できる環境を形成できればと思っています。
Posted by kinsan at 2010年04月29日 08:22
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/147933316
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。