通所介護の機能と役割と存在意義

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通所介護の機能と役割と存在意義

2013年3月31日

本日をもちまして、5年9ヶ月勤めた法人での勤務が終わります。
この間、通所介護事業所の管理者、生活相談員、介護職員を勤め、また地域の通所連絡会の役員を務めさせていただきました。
今日は私がここで学ばせていただいた『通所介護』の機能と役割について、備忘録がわりに残しておこうと思います。

まず通所介護の法的位置づけについて列挙してみます。

@指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
第七章 通所介護 第一節 基本方針
(基本方針) 第九十二条 
指定居宅サービスに該当する通所介護(以下「指定通所介護」という。)の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。

第四節 運営に関する基準
(指定通所介護の基本取扱方針)
第九十七条 指定通所介護は、利用者の要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう、その目標を設定し、計画的に行われなければならない。
2 指定通所介護事業者は、自らその提供する指定通所介護の質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない。
 
(指定通所介護の具体的取扱方針)
第九十八条 指定通所介護の方針は、次に掲げるところによるものとする。
 一 指定通所介護の提供に当たっては、次条第一項に規定する通所介護計画に基づき、利用者の機能訓練及びその者が日常生活を営むことができるよう必要な援助を行う。
 二 通所介護従業者は、指定通所介護の提供に当たっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者又はその家族に対し、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行う。
 三 指定通所介護の提供に当たっては、介護技術の進歩に対応し、適切な介護技術をもってサービスの提供を行う。
 四 指定通所介護は、常に利用者の心身の状況を的確に把握しつつ、相談援助等の生活指導、機能訓練その他必要なサービスを利用者の希望に添って適切に提供する。特に、認知症(法第八条第十六項に規定する認知症をいう。以下同じ。)である要介護者に対しては、必要に応じ、その特性に対応したサービスの提供ができる体制を整える。

(通所介護計画の作成)
第九十九条 指定通所介護事業所の管理者は、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて、機能訓練等の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した通所介護計画を作成しなければならない。

A介護保険法第8条
7  この法律において「通所介護」とは、居宅要介護者について、老人福祉法第五条の二第三項 の厚生労働省令で定める施設又は同法第二十条の二の二 に規定する老人デイサービスセンターに通わせ、当該施設において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの及び機能訓練を行うこと(認知症対応型通所介護に該当するものを除く。)をいう

B老人福祉法第5条の2
3  この法律において、「老人デイサービス事業」とは、第十条の四第一項第二号の措置に係る者又は介護保険法の規定による通所介護に係る居宅介護サービス費、認知症対応型通所介護に係る地域密着型介護サービス費、介護予防通所介護に係る介護予防サービス費若しくは介護予防認知症対応型通所介護に係る地域密着型介護予防サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者(その者を現に養護する者を含む。)を特別養護老人ホームその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、これらの者につき入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練、介護方法の指導その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業をいう。

これらの根拠から通所介護の「目標・役割・方法」と、そのための努力事項をまとめてみます。デイサービス機能と役割1.png

つまり、通所介護とは「利用者の在宅生活の継続と自立した日常生活を支援すること」がその存在意義だと言えます。逆に言うと、これに沿わない通所介護は存在意義がないとも言えます。
この最大の目標達成のために「社会的孤立感の解消、心身の機能の維持、家族の負担軽減」(後者二つに含まれるものとして入浴があると思われます)という役割が通所介護には求められるわけですね。
そして、これらを具体的に実践していくための方法として「日常生活上の世話(介護)、機能訓練、相談援助(介護指導等)」が挙げられています。
これらの目標、役割、方法が有機的に提供されるように「研鑽された介護技術、計画的なサービス提供、丁寧な説明責任、認知症の方への体制整備」などが挙げられています。


さて、ここで更に通所介護を取り巻く資源や環境を考えてみたいと思います。
ここを深めることで施設介護とも、通所リハビリとも違う「通所介護の潜在機能」が見えてくると思います。
デイサービス機能と役割2.png

通所介護を取り巻く資源や環境としては大きく3つ挙げられます。
「多様な人間関係」「在宅生活」「サービス」です。
つまり、利用者さんが生活する拠点である“我が家”があり、そこを基点とした家族や地域とのつながりをベースとして持ち、通所介護に集う多様な人間関係とそれらが有機的なサービスとして提供されるための専門的な通所介護サービスがあるわけです。

このような資源、環境を活かしながら、通所介護の「目標や役割達成のために方法を実践していく」ことに通所介護事業所の存在意義があるのです。そして、それができるようにすることに、通所介護事業所で働く対人援助職の専門性が見いだせると思います。


さて、ここからは実際の通所介護事業現況について考えてみたいと思います。
通所介護事業は介護業界の中でも企業努力を反映しやすい事業だと思います。上記の意義を抑えながら多様な事業者が創意工夫を持って展開しています。
通所連絡会の役員を務める中で、実に多様な形態、サービスを提供する事業者さんに出会いました。
私は全ての事業者さんの努力に最大限敬意を払った上で次のような課題があると考えています。

1.身体的機能訓練に偏りだしている
2.多様な人間関係を活かせていない
3.相談援助機能が活用されていない
4.介護度が中重度の方へのサービスが十分ではない

1.に関して、身体的機能訓練を通所介護で提供することは正しいことです。それは否定しません。しかし、そこに偏重している事業者さんが多すぎると考えます。事業所の特徴を聞くと身体的機能訓練に関するハードサービスばかりがウリにされています。
これにより上記意義を実践していくソフトの専門性が影を潜めてしまっているのです。通所介護で展開されるべき専門的技術の研鑽が行われなくなります。これは「通所介護に保険給付が本当に必要か?」という議論に発展する温床になっていると考えます。
1の課題は2.3.4の課題を生んでいる大きなきっかけです。
しかし、この課題は通所介護事業を取り巻く社会的環境が後押ししていることも大きな影響と言えます。身体的自立に偏重しだしている制度背景も課題です。
(再度言及しますが、身体的機能訓練特化は悪いことではありません)


課題2.について、通所介護事業の大きな特徴は多様な人間関係を活かすことにあります。在宅の介護保険サービスの中でも利用者と社会を結びつける大きな効果が期待できるものの一つです。
課題3.について、通所介護事業では介護職が比較的長い時間、利用者と一緒に過ごせることに大きな特徴があります。また、利用者の心情の変化等のタイミングに出会いやすいことも、長時間の時間の共有のおかげです。こうした中で、日常生活における様々な相談援助の機会に出会えるのです。

しかし、現状の通所介護、とくに課題1.の流れの中で通所介護職員の「集団援助技術」「相談援助技術」の研鑽が遅れています。
この二つの技術は、通所介護における最も効果を発揮できる専門的技術だと私は考えています。この二つの能力が高いスタッフがいることにより、実は人手が足りない、という現場の課題も解消できるという実例を多く見ています。
個々の利用者との信頼関係を築き、その方との悩みや苦しみ、喜びや希望を分かち合い、それらを他の多様な人間関係に結びつけていくことで、利用者さん個々のエンパワメントを促すだけでなく、利用者の集団の自助力が他の利用者のエンパワメントにつながるということが期待できるのです。

これら1.2.3の課題があることで、私たち通所介護事業所全体の専門性が停滞し、介護度が中重度の利用者さんが通所介護で享受できるサービス効果が上がらない、という課題4につながります。
ややもすると介護度が中重度の利用者さんは、通所介護において入浴と家族の負担軽減のためだけに居させられている状況を生み出しかねません。
こうした利用者さんたちも、通所介護職の専門性があればその効果を享受出来るだけでなく、社会の一員として尊厳を保ちながら生活できる主体者になることができるのです。

時代の流れは介護業界全体に厳しい方向になっています。通所介護も然りです。
だからこそ、通所介護とは何なのか?その問いに改めて向き合って、日々の事業展開を行い、それぞれの課題を解決していかなければ、通所介護事業自体の存在意義が「介護報酬から外される」という最も厳しい社会的評価を受けるかもしれません。



私はこの5年9ヶ月、できるだけ通所介護というサービスの本来の目標や役割を発揮し、その効果を利用者さんが享受できるような方法を同僚たちと実践してきたつもりです。
そうすると、それには実はとても高い専門性が求められるということに気づきました。そのチームを作っていくことは大変でしたし、完成はできませんでしたし、失敗が大多数でした。
もちろん、通所介護事業の限界もあり、だからこそ他のサービス事業との連携が大切だということも痛切に感じました。

「うちのデイサービスは何も特徴はありません。利用者さんの個別性を大事にして、計画に基づいて、その目標を達成するために集団という中でサービスを提供する、教科書通りを目指そうとしているデイサービスです」

このようにずっと思っていました。そして、地域のケアマネさんなどにもこのようにお伝えしてきました。

という、私の経験と仲間たちとの実践をまとめてみました。
もちろん、これも正しい通所介護のあり方ではないかもしれませんが、このように考えて展開してきたこの年月を忘れずに、今後に活かしていきたいと思います。

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この記事へのコメント
お疲れさまでした。
介護保険施行間もなくのころ、訪問介護業界は随分、盛り上がっていました。
それが、制度改正による厳格化、コムスンショックでガタ落ちとなりました。

今、デイの業界を見ていて、当時、盛り上がっていたころの訪問介護業界に似ていると感じてます。
そして、そうしたデイ業界の危うさに対し、当事者達が何の懸念も示さないことに対してもっとも危惧しています。

コンプガチャの問題にせよ、利用者に対して、非道徳的な風潮があれば、業界自ら自主規制など健全化していくのが他の業界にはありますが、介護業界には、それがない。

しかも、相手は権利主張できない老人であるがゆえに、いとも簡単に人権侵害されるというのに業界自ら、それを犯している現状に目を向けようとしなかったりする。声を挙げたり、意識化しようとしなかったりする。

私はそうした介護の倫理観、道徳観も不完全な状況下で専門性や質の向上もないだろうと思ってます。(kinsanの専門性向上の想いは尊敬してますよ、もちろん)
Posted by 本間 at 2013年04月08日 22:43
本間さん、コメントありがとうございます。

私は2005年度から介護業界に入りましたので、おっしゃる訪問介護業界の盛り上がりは、あまりよく存じておりません。もし、それが今の通所介護業界に似ているところがあるというのでしたら、それは本当に危惧すべきことですね。

地域の連絡会においても、包括、主任ケアマネ、ケアマネ、訪問介護の連絡会などに対して、通所連絡会は、声も小さかったように思いますし、地域包括ケアシステムや制度改正の議論の中でも通所介護はあまり話題に登っていないように思います。
そうしたこともあるのでしょうか。通所介護の本質論ではない話題が多いサービス事業です。

いま注目されている、盛り上がっているのは、介護業界ではなく、介護職業界ではないかな?とふと思ったりもします。。。アドボカシーの機能と役割はいったい誰が?どこが?担うのでしょうか?と私自身もわからなくなっています。。。
高齢者福祉におけるアドボカシーについては、私自身も行えていないと痛感しています・・・

介護の倫理観、道徳観というものが育っていないままだという懸念は私も強く抱いています。

いわゆるサービス業ではなく、介護という対人援助においてはこれらのことが一番大切な核なのですが・・・

これらの課題はどのように取り組んでいけばよろしいものでしょうか・・・



Posted by kinsan at 2013年04月08日 23:28
>これらの課題はどのように取り組んでいけばよろしいものでしょうか・・・

僕も思案しています。。。


Posted by at 2013年04月10日 05:04
代弁者だけでは限界がありそうですね。
若年性認知症の方々と共にソーシャルアクションを起こされている尊敬すべき実践者はいらっしゃいますが、いわゆる“高齢者介護”における当事者発信を正規ルートで行うのはまだまだ途半ばですね。

私も共に活動している人は若年性の方です。そちらも大切なのですが、高齢者介護はどうすればよいのか。家族介護者の方が代弁機能があるのでしょうか。いえ、でも利害関係にあると難しいのでしょうか。。。
Posted by kinsan at 2013年04月10日 11:58
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