利用者の家に鍵をかけることから浮かび上がる課題

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利用者の家に鍵をかけることから浮かび上がる課題

2013年6月10日

事業所内で下記のニュースを閲覧し、話し合いがありました。
老夫婦の自宅に鍵を掛けた居宅介護支援事業所と訪問介護事業所が、介護保険法に基づき6ヶ月の営業停止処分になったケースです。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130603/waf13060322110020-n1.htm

これだけ見ると「酷い事業所だ」「ありえないケアマネだ」などの言葉が出てきそうです。
しかし、何が何故いけなかったのか、どうすれば良かったのかを学ばなければ、いつ自分たちだって同じことをするかわかりません。

今日はこのケースについて事業所で話し合ったことを書き残してみたいと思います。



まず、このケースの中で、一体何がいけなかったのでしょうか。

記事には『身体拘束であり虐待である』と書かれているので、高齢者虐待防止法に抵触しているのだと思われます。

つまり身体拘束であることがいけないことだということですが、身体拘束とは何が悪いことなのでしょうか。

身体拘束の悪い面を一言で表すと『基本的人権の侵害』だと言えるのではないでしょうか。
つまり、人間の尊厳、生存権、幸福追求権、などを侵害する行為だったと言えます。
また、こうした憲法の抵触だけでなく、居宅介護支援専門員や介護福祉士の職業倫理等にも抵触していたと思われます。



次に、何故記事中のケアマネやヘルパーは利用者夫婦の自宅に鍵をしたのでしょうか。

記事からだけでは詳細不明ですが、徘徊の恐れがあるということから、認知症の老夫婦であったと仮定することができます。
ケアマネの言葉からも、この老夫婦が徘徊し、行方不明になったり、転倒する危険性を回避するために鍵をかけたという思考がうかがえます。

つまり『生命の危険を回避するため』であったと思われます。


分解してみると、このケースは、利用者の『生命の危険を回避するため』に『基本的人権を侵害(制限)』したことだとわかります。

利用者の生命と人権を擁護するせめぎ合いだったわけです。
そして、生命を失う危険よりも、人権を制限する選択をしたわけです。


小さなことを言えば、我々だって普段この両方のせめぎあいの中で仕事をしているのです。

転倒のリスクがある利用者が立ち上がろうとすると『座って待っていて』と声をかけたり、施設から外へ出ていってしまう利用者に対し、人手が少ない時は『まだ帰る時間じゃない』と制限を加えています。


生命と人権。二者択一ならば『生命』が選択されるのが実情ではないでしょうか。


しかし、私たちは対人援助の専門職なのですから、どうすれば、この両者を守ることができるかを考えなくてはなりません。
今回は記事中にもあるように、この“考え手続きを行う”ことを怠ったことに非があるのです。


ここまでは誰でもわかること。大切なのは、では自分だったら実際にどうするか?を“考えること”にあります。


一つ目に考えることは、本当に緊急的に拘束する必要があったとしたら、やむを得ず鍵をかけても仕方なかったと思います。
身体拘束には例外があります。

介護保険指定基準に関する通知によると
「緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者(利用者)の心身の状況、並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない」とあり

『切迫性』:利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
『非代替性』: 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
『一時性』: 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること

上記三つを満たし、記録しておくことが求められます。
この規定を満たすことが一つ重要なガイドラインだと思います。
ただ、これは在宅において適応されるかどうか、私の知る範囲では現在定かではありません。申し訳ありません。


二つ目に考えることは、法的措置です。
一つ目と近いものがありますが、どうしても在宅において施錠をしないことが生命の危険を招く状況下であり、また法的条件に合うならば、緊急の措置入所や入院をとることも必要になってくると思われます。



三つ目に考えることは、利用者夫婦本人たちに説明し同意をとることです。

施錠をすることの説明を行い、同意を記録し、施錠するのです。
ただ、これも一つ目二つ目のように緊急一時的経過措置として行われることが望ましいと思われます。他の代替案を並行して進めるまでの策です。
しかし、説明して自宅に軟禁されることを了承する人は少ないはずなので、現実的ではないと思います。


さて、これらは緊急一時的に行われる対処療法的な手段です。また、ここまでの対処が必要なケースであれば、自己決定の意思表示が難しい場合が多いはずです。
そうであるならば、家族や成年後見人など、権利の代行者を立てることを進めていくことも必要です。
私たちは利用者の権利を守る使命がありますが、それを行使できる裁量や能力がある分野は限られています。これは自覚しておかなければなりません。
必要な対処と、権利擁護を行使できる者へつなぐこと、その手段を知ることと、そこに至るプロセスを考えることが専門職として必要なことだと思います。



もう少し突っ込んで考えたいと思います。
上記までの考えは、あくまでも緊急対応と繋ぎ方までの考えです。
今後ますます増えていく老老介護、認認介護、独居世帯等を考えると、緊急一時的な手段が常態化する要因があります。
こうしたケースはますます増えていくでしょう。
そうすると、施設や居住施設などに住み替えられる人は良いですが、記事中のような利用者がいつまでも住み慣れた“自宅”で暮らしていくことは非常に難しくなってきます。

実は、ここが一番考えられていないというか、現実的な対応策がまだまだ無いのだと痛感しています。
緊急一時的な措置を行い、住み替える。このパターンしかまだあまり普及していないのではないでしょうか。


マンションの隣近所の住人に見守りをお願いしたり、外出時に知らせるようなシステムや、本人にGPSを持たせるなど、出て行ってしまうリスクに対する策はいくつかあります。
しかし、安心して住み慣れた自宅で生活するにはまだまだ心もとないです。
小規模多機能のようにいつでも柔軟に見守り訪問したり宿泊や通いサービスでフォローすることは可能ですが、24時間365日の転倒リスクや行方不明のリスクをゼロにすることは不可能です。


今回の記事を見て、前半のように、専門職としてなすべき、考えることや権利擁護を行うこと、行使する領分をわきまえてつなぐことなどの大切さをしっかり身につけておくこと。
そして、後半のように、では対処療法ではなくて、どうすればこうした利用者が今後住み慣れた自宅で住み続けることができるのか、ということを考えて実践していくこと。
早急の課題として浮かび上がってきました。

記事をご覧頂きありがとうございます。
今回のケースに関して、ご意見のある方、何か良い案や手法がある方、実践している方がいらっしゃいましたら是非コメントください。よろしくお願いいたします。
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