利用者さんに向き合う介護とは

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利用者さんに向き合う介護とは

2014年5月2日

前回の記事等で、利用者さんに「あなたは認知症です」「あなたは養老院に入るのです」ということを伝えたり、「私は認知症ですか」という問いに向き合う現場について書きました。

今回は、これらの事例を通じて、スタッフ間で「利用者さんに向き合うとはどういうことか」というテーマや、ユアハウス弥生の理念である「嘘をつかない」ということを見つめなおそうという会議を行いました。

会議から見えてきたことを考察します。


会議ではまず以前私が書いた記事、「私は認知症ですか?」という問いに向き合ってをスタッフで音読し、感想を述べ合いました。

スタッフ1
どうして金山さんはAさんにこのような対応をしたのですか?根拠となることは?
 ここで、このことを聞かなかったのはなぜですか?

スタッフ2
 私たちの仕事は認知症の方を特別視するものではなく、認知症を患っている前に一人の“人”として接することが大事です。認知症だから嘘をつかないとか、本当のことを伝える、ということがちょっと違うのではないかと思います。あと、施設には入りたくて入るわけではないし、家族も入れたくて入れるわけではない、ということを経験上言っておきたいです。

スタッフ3
 このように接することができるかわからないけれど、利用者さんに喜んでもらえるように関わりたいと思います。一人一人にちゃんと介護を提供する、仕事を丁寧にやりたいです。

スタッフ4
 嘘をつくということが悪いことだとは思いません。必要な嘘もあるはずですし、そうやって人間関係を保つこともあるはずです。だから、一律に嘘をつかないということは違うのではないかと思います。

スタッフ5
 なんと言ってよいかわからない。何か色々と考えさせられてしまいました。自分の生活なども振り返って、自分だったらどう対応しただろうかと。また、これからこういうことを質問される方も増えてくると思います。どうしてよいかわからないけど考えてみたいです。

スタッフ6
 ずっと嘘をつかなかったり本当のことを伝えたいと思っていても、伝えられずに施設に入る方もいたし、お別れした利用者さんがたくさんいました。でも、私は金山さんのようにこんなに上手には言えないし、対応できないと思います。嘘はつかないにしても、はっきり伝えられるとは思いません。だからではありませんが、そういう部分ではない日々の日常生活の介護の部分を誠実に提供したいし、そこでしか向き合うって私にはできていないと思います。

スタッフ7
 こういう対応の仕方があるのかと勉強になりました。私も色々と利用者さんに接する中で想いをぶつけられることがあってどうしてよいかわからないことがありますが、このように対応するという一つの例を学ばせて頂いたと思います。自分にできるとは言えませんが、答えの一つを知れたことはよかったです。


概ねこのような感想が出てきました。

私個人としては、私の対応に対して迎合するでもなく、多様な感想が出てくれたことが非常に嬉しかったです。


スタッフの話を聞いて私は次のように話をしました。

それぞれの立場から多様な側面の意見が出たことを嬉しく思います。
まず大切なことは私たち介護職と利用者さんの大きな二面性です。
私たちは「介護職である前に人であり」「人であると同時に介護という職を生業にしている」ということ。
利用者さんは「認知症である前に人であり」「人であると同時に認知機能の障害という状態を抱えて生きている」ということ。

どちらが大事ではなく、この両面を抱えながら利用者さんと向き合っているのです。これを忘れてはならず、どちらかに傾倒しすぎても良くないと思います。
利用者さんは要介護状態にならなければ、おそらく私たち介護職と出会うことはなかったはずです。であるならば、認知機能障害を抱えて生きるというその人が持つ特性はしっかり押さえなければならないです。しかし、その特性だけで利用者さんは生きているわけではなく、感想にもありましたように一人の人として生きているという、私たちと何ら変わりない人であるということもおさえなくてはなりません。

また、私たちも、ただ単に思いやりと優しさで利用者さんと一緒にいるわけではなく、社会保障制度の一翼として国民の基本的人権を守る最前線の職種として、対価を頂いて介護を提供しなければならない立場にあるわけです。ですから、知識技術の研鑽をしなければならないし、知らぬ存ぜぬ、できません、では通用しない立場にいることもまた事実です。
提供する介護の質に責任を持たなくてはなりません。本人に認知症であるかどうかを伝えることは、現在の世の中ではまだ一般的ではないと思います。しかし、社会通念上の常識や通例に倣った接し方だけではプロとは言えない部分もあります。
同時に、私たちも人であるわけですから、できないこともあるし、無力を感じます。それは大事にされるべきですし、できないことを責められる筋合もないです。

こうした、利用者さん、介護職の二面性をおさえて仕事をしてほしいです。


また、今回の私のAさんへの対応は正解ではありません。こうした対応に全ての答えを見出してはいけません。
スタッフ6さんが言ったように、金山はこのように対応した、しかし私はこのように接することはできないと思う。自分ができる向き合い方で利用者さんに向き合う、という答えで構わないのです。

同時に、スタッフ7さんが言ったように、私もかつては利用者さんに向き合う中で何もできない自分の無力を痛感した経験があります。今はこのような対応を悩みながらやっていますが、道半ばなのです。ですから、できないということは正しいのです。
また、無力であること、何もできないということは、利用者さんの前に立ちふさがる死や運命に対して“共に在る”というケアになり得るのです。
私もかつて、自分の父が瀕死の状態にあった時、ただ一緒に泣いてくれた利用者さんに救われたことがありました。「私には何もできません、あなたの悲しみを救えません」といって一緒に泣いてくださった利用者さんが私には最大のケアを提供してくれたのです。
ですから、できないことを嘆かなくてよいのです。
ただ、私も己の無力感や敗北感を糧に、少しでもできること、未熟な自分を克服したいと思って今があります。ですから、無力であることを認めると同時に、できることを少しずつでもよいから身につけていって欲しいです。


このようなまとめをした後、それぞれグループになって、今いる利用者さんに対してもっとできる“向き合う”はないだろうかということを話し合いました。


スタッフの話し合いの意見から、利用者さんに向き合うということ今回は特に「利用者さんに認知症であるかどうかを伝える」ということについて共有すべき事項の洗い出しを行いました。


@ 家族とのコンセンサス
利用者さんの求めに応じて真実を伝えることはやろうと思えばできることです。
しかし、特に在宅生活においては、介護職が24時間365日一緒に利用者さんと過ごすわけではありません。完全に独居の方以外は、必ず家族が一緒にいる時間があるわけです。
そうすると、介護職が独断で行った行為が、ご本人の在宅生活や家族との関係性にどのような影響を及ぼすかを十分に考慮しなければなりません。
また、介護職が真実を伝えても、家族が本人に本当のことを言えないことも十分に想定できます。そうすると、ご本人にとっても家族にとってもアンバランスな状態が続き、結果として在宅生活継続に支障が出てくるようになっては真実を伝えることの効果が実りあるものになりません。
家族と介護職が、本人に向き合うこと、ということのコンセンサスを十分に図らなければならないということです。
また、介護職という他人だからできることもあります。家族に介護職と同じことを迫ってはいけないわけです。介護職と家族との関係を深めることも含めて、十分な対話が求められるでしょう。


A 根拠ある対応
認知症の利用者さんに対して「あなたは認知症ですよ」ということは完全な正解ではありません。完璧な正しい対応ではないのです。ここは十分な理解が必要です。
あくまでも、ご本人の発言やその時の状態から真実を伝えることが介護として必要であるという時に伝えられるべきです。必要であれば、介護職から伝えるよりも医療職や家族から伝えて頂くことの方が効果がある場合もあります。
大切なのは、真実を伝えるという“ケア”の根拠となる事実を客観的におさえておかなければならないということです。場当たり的に行うものではないのです。

家族や他職種も含めてカンファレンスが行われたのち、計画立てて行われることが理想ですが、現場はライブですので、今回のように一介護職の判断でそれを提供することもあります。ですから、その時の根拠をしっかりおさえるということは大切なポイントと言えます。


B 介護職員の力量
いざ根拠をもって伝えることを決めたとしても、認知症状をお持ちのご本人に対して伝えることができるかどうかはスタッフ6の発言もあるようにまちまちです。
伝えることでかえって相手の不安や不信を増長させてしまうこともあり得ます。実際のその場面では“やってみなければわからない”部分はあります。
しかし、@Aのような家族のコンセンサスやカンファレンス等がない場合はもちろん、例えあったとしても、ご本人に実際に伝えるという行為は非常に難しいことかもしれません。
加えて、伝えるということは相手にとっても、同時に介護職自身にとっても大きな負担となり、後々表れる状況に対する責任や覚悟が問われることになります。そのことが介護職自身の過剰なプレッシャーになるようであるならば、それは行われるべきではないかもしれません。

こうしたことからも、誰彼かまわず、介護職員のスタンドプレーで伝えることが行われることはあってはならないのです。



私が記事の中で利用者さんに応じたやりとりは、結果として良かったのかもしれませんが、結果論では介護の専門性とは言い難いですし、一介護職の職人芸であってはならないと思います。
ですから、スタッフの対話から出てきた共通の事項を抑えていくことで、利用者さんに向き合うことを行っていきたいです。
今回のスタッフとの対話で見えてきたことは、利用者さんのニーズに応える方法の一つとして真実を伝えるということも選択肢の一つになりうるということです。一律に線引きされるものではありません。

共通事項の@ABを抑えること、そして、介護職として利用者さんに誠実に向き合おうとする姿勢そのものが、“向き合う”ということなのかもしれません。

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