統制された情緒的関与の介護現場実践

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統制された情緒的関与の介護現場実践

2014年7月19日


介護福祉士の仕事で、利用者さんと共に生活活動を行ったり、介助をさせて頂くという行為からアセスメントやコミュニケーションを行う生活場面面接があります。
私たちはケアワークという仕事を中心としていますので、相談援助職のように改まった場面での面接よりも、一緒に過ごす中での面接、ふとできた時間での面接が多いわけです。

そうした中でも、やはり援助関係を形成する上での古典である「ケースワークの原則」にある「バイスティックの7原則」は重要な援助原則だと考えています。

今日は、この7原則のうち、「統制された情緒的関与(=援助者は自分の感情を自覚して吟味する)」を実際に展開してみた現場を振り返り、介護福祉の仕事におけるこの原則について考察してみたいと思います。


まずこの「統制された情緒的関与」とはどんな原則なのかを簡単にまとめてみたいと思います。

1.相手の感情に対する感受性を持ち、その感情を理解し、援助という目的を意識しながら、その感情に適切なかたちで反応すること。

2.感受性とは、相手の感情を観察し、傾聴していく技術であり、そのためには自分自身の自己覚知が必要である。

3.相手の感情を理解するためには、人間に共通することの知識が不可欠で、更にその感情を相手が抱える問題との関連性の中で理解する必要がある。

4.相手の感情を感受して理解し、そして適切に反応するという技術が大事で、この反応が最も難しい技術である。

5.適切に反応するためには、どう答えようか、という外的表現方法ではなく、その感情を受けたことで自分自身の内的反応に気づくことが大事である。

6.その内的反応が相手への援助目標や面接の目標として適しているかを吟味する必要がある。

7.吟味し、相手を受け止めようとしている態度や、相手の困難を理解しようとしていること、心理的サポートだと感じられるよう伝える(反応する)。


一言で乱暴にまとめるとすると『相手の感情にベストな返しをする』ということですね。



Mさん、要介護2、独居、80代女性。変形性膝関節症、喘息。

大腿骨頚部骨折による入院、リハビリ、退院後の利用契約でした。それまでは自宅や近所の商店での買い物が日常生活圏域であり、近所づきあいが盛んでもなく、自宅でテレビを見て過ごしていた方でした。
小規模多機能をご利用されて日は浅いのですが、通いによる他者との関わりや諸活動に対してとても好印象をお持ちで、皆さんと一緒に過ごしたい、また来たい、という想いは強い方です。
近所づきあいがあるスタッフもたまたま居たので、馴染みの関係性を求めていたり、外に出ることで下肢機能を回復させたいという想いも強い様子でした。

しかし、持病の痛みや苦しさや、通い利用されている際に発作が起きたりして、少しずつ通えなくなり、訪問対応が多くなっていました。

「行きたいんだけど、皆さんに迷惑がかかるから」ということをおっしゃっているようでした。
訪問スタッフが来ると、それは喜んで笑顔でずっとお話をされているという状態だったようです。

Mさんには、骨折前に送っていた日常生活圏域での活動を再開していただけるよう、通いによって生活リハビリを重ねつつ、病状の管理、服薬確認、安否確認、入浴を含めて通いサービスを計画していました。
しかし、通えなくなることで、薬届けや食事を届ける等の訪問サービス内容が増えました。


Mさん宅へ訪問を一度もしていなかった私が、ここまでの状況を踏まえてMさんのお気持ちを直接聞いてみようと、訪問しました。


Mさんは事前情報のとおり「本当は行きたいんだけど、皆さんに迷惑がかかっちゃ悪いから」「元気になったら行きたいんですよ」「また皆さんとお寿司食べに行きたいわ。本当に美味しかったから」というようなことをおっしゃっていました。

通いサービスを利用していた時の話題については笑顔で思い出し笑いをしたり、スタッフや一緒に活動した他の利用者さんのことを話していました。
しかし、実際に通うという話題になるとうつむき加減で、声のトーンは下がり、笑顔ではなく、遠い目をして自嘲気味な表情でため息混じりでした。

Mさんのこれまでの人生について色々と伺うとわがままなお姑さんとの関係に苦労し、最期まで嫁の勤めを果たしたこと、親が早くに他界し、長女であるMさんが親代わりに下の兄弟の面倒を見て苦労したこと、戦時中の話が続きました。
「苦労した」「人生色々」「今は子供たちがよくしてくれる」「幸せな方だと思わなきゃ」「元気出さなきゃ」
繰り返されるキーワード。そして心からの笑顔ではない苦笑い。遠い目線と沈黙。


2の観察と傾聴によって得られたことはこのような内容です。
その間、服薬を勧めたり、水分補給や、昼食を用意したりしています。

また、3のところでいうと、苦労してきた人生と抗えない時代や家族環境の流れの中で、自己を抑えるような抑制の防衛機制が働いていたのではないかと考えました。
自分がわがままを言わず、世間一般的に評価される姉、母、嫁、姑を生きてきたMさんは、そういう自分の抑制された自己の承認欲求を満たそうと、葛藤の中で取引をしてきたのだろうと考えました。
また、私自身は相手の信頼を勝ち得ることによる承認欲求が強く、信頼を鎖に相手を支配したいという深層心理があると自己分析していますので、質問や承認の言葉はあくまでもMさんが自分自身に向き合うようなものを選んで伝えました。


そして、Mさんの想いを聞きながら、5のMさんの感情は「諦めによる無力感」と「自己抑制」でした。
一言で言うと「仕方ない。私が我慢すればいいのよ。そうやって生きてきたんだから」ということでした。
Mさんのそうした感情を受け取ることによって私が一番感じた内的反応、心にさざ波が起きたのは「私は何して生きてきたんだろう」という自分の存在の意味と目的をいつも二の次にしてきた痛みでした。


そして、6の総合的な援助目標などに照らし合わせると、自己抑制してきた自分という人間が、老いて人に迷惑をかけてまで楽しさを享受してはいけないのだという想い、痛みがあり、それが骨折前の日常生活や健康管理、QOLの向上の障害になっていると吟味しました。
そのことを自ら開放して良いと思えるような、私が支配をしてしまわないで、自分自身で自分をコントロールして良いと思える“反応”が必要だと吟味しました。

そして7の通り伝えました。


沈黙・・・・という反応を最初しました。

M「元気出さなくちゃね」

私「もう元気出そうって思わなくてもいいんじゃないですか」

M「えっ!?」

私「散々人生苦労して頑張ってきて、そしてもうすぐお迎えが来る頃になって、まだ頑張るんですか?もういいんじゃないですか?」

M「そう・・・そうよね!!頑張らなくってもいいわよね!!そうよね!!」(満面の笑顔)

私「自分にこれまでよく頑張ったねって言ってあげていいと僕は思いますよ。本当に頑張りましたね!」

M「頑張ったわよ。本当に苦労たくさんしてきたから・・・」(目はふさぎがちだが口角は上がり気味)

私「僕はMさんとお寿司食べに行きたいですよ。お迎えはすぐ近くに来てるんですから、やり残さないで最期は自分の好きな時間を過ごしたらいいじゃないですか。通いで来てくださっている時にお迎えが来ら僕が見送りますよ」

M「本当に!?でも、私できれば家でひっそりと逝きたいわ。そして子供達か皆さんが来た時に見つけてもらうの」

私「最期までMさんらしいですね。では、死に顔が後悔の顔じゃないようにしなきゃですね」

M「私明日は行きます。ありがとうね。明日は必ず行くわ」



そして、翌日Mさんは久しぶりに来所してくださったのでした。

普段、利用者さんやご家族と面接を重ねる中で、色々とその場その場で考えて状況を判断して、私は言動を相手に伝えています。
しかし、いきあたりばったりではなくて、根拠あるコミュニケーションを通じて、適切な援助関係を築くことが専門職として大事だと思います。
この統制された情緒的関与でバイスティックが述べているポイント一つ一つに当てはめていくと、分析ができるし、今回のMさんとのやりとりは、一応体裁を整えて出来たほうかもしれません。

しかし、相談援助職と違って、私たちの面接は記録に残りにくいですし、それを振り返るスーパービジョンもなかなか行われません。
介護福祉士にとっても面接を通じた援助関係の形成は大事な仕事です。
こうして、時々振り返ることも大事なのかと思います。

また、介護福祉士はケアワークとして援助する事柄がある程度定められており、時間内にその最低限のミッションを行うということが課せられています。
例えば、服薬や水分補給、移動や食事、排泄、入浴、更衣などに関することです。もちろん、サービスありきではありませんが。
そうした事柄を行いながら、また行う前にこうした生活場面面接の中での原則を用いながら支援を前に進めていくことが、相談援助職のそれとは異なる特殊性なのかと思います。
介護行為を行いながら、適切な援助関係を築き、支援を行えるプロフェッショナルでありたいと思います。



最後にMさんから

M「あなたも苦労しているのね」

私「え?なぜそう思われるんですか?」

M「だって会話するのが上手だもん。よっぽど訓練しているのね」

一本取られました。。。
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この記事へのコメント
>相談援助職と違って、私たちの面接は記録に残りにくいですし、それを振り返るスーパービジョンもなかなか行われません。

というか、

残そうという、意識がなかっただけじゃないのかしら?

こういった面接場面は、相談援助、介護、看護等々、分野を問わないと思いますし、意識しなければ、記録に残せません。
Posted by coco at 2014年07月19日 08:56
cocoさんコメントありがとうございます。

おっしゃる通りですね。
私も数年前は会話記録を書き起こして、評価をして頂いたりしてましたが、こうした行為を行ったのは久しぶりでした。
意識しなければなかなか取り組まずに流れて行ってしまいますね。
事業所全体としても取り組む意識がなければ難しいこと。
専門職として、自己を振り返り質を高めていくためにも、取り組まなければなりませんね。

今後は職場でも取り組めるよう働きかけてみたいと思います。
Posted by kinsan at 2014年07月19日 10:31
くだらねー
Posted by at 2016年11月12日 19:40
匿名さん、コメントありがとうございます。
どの辺が、くだらねー、でしたか?
Posted by きんさん at 2016年11月12日 20:20
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